【完】『大器晩成』
そのくせさぁ、と梓は言う。
「子供産んだら仕事出来なくなるし、私の地元の友達だって保育園見つからないってこないだボヤいてたし」
産めったって無理だよね、と梓は言った。
「そら好きな仕事だけして生きてたいわな」
眞姫もそこは大きくうなずいた。
「恋愛とか結婚とか子育てとかさ、あれってセレブのするもんだよね。うちらみたいに普通に働いてる女がするような話じゃない」
梓なりの皮肉なのか、あるいは悲鳴に似た痛みなのか、笑えもしなければ泣けもしないようなことを言った。
あとはちょっとした世間話をして梓は帰って行ったが、ふと我に返ると、
「まずは仕事で結果、出さなきゃなぁ」
と、途中になっていた素焼きの窯出しの作業に戻っていった。