【完】『大器晩成』
釉薬は。
眞姫は二つ選んだ。
一つは銅青磁の釉で、線を浮き出させて淡い鶸色になるようにしたもの。
もう一つは。
敢えて均窯の薬を薄めにし、還元で焼いてみるという博打に近いものである。
うまく行けば美しい紫になるはずである。
銅青磁は還元で焼いても、色はさまで変わらない。
こうして。
窯入れをし、本焼きが終わるのを眞姫は待つことにしたのである。
「人事を尽くして、天命を待つってことかぁ…」
窯入れから窯出しまで、粗熱を取るのも含め三日はかかる。
この間。
眞姫は何も出来ない。
待つのも、このときは仕事であった。
当たり前だが。
眞姫の窯は花瓶二つでいっぱいになっており、他のが焼ける訳ではないので、付きっきりで過ごしたのである。