【完】『大器晩成』
◇12◇
エントリーの締め切り日、眞姫は作品を出すかどうかで最後まで決め切れなかったが、
「それなら二つを一対の組物として出せばいい」
という麟太郎のアイディアで、例の花瓶を組物として出展したのである。
この話を梓にすると、
「私は美術はよく分からないけど、でもそれで何か参加賞みたいのもらえたら、それはそれでいいんじゃないかなぁ」
というようなことを言った。
眞姫も、
「そうだよねえ」
まるで自身に言い聞かせるように、落ちたときの保険のような言い方をした。
そうやって。
一ヶ月近くが過ぎて、エントリーしたことすら眞姫が忘れかけていた頃、
「最終審査合格のお知らせ」
という封書が着いた。
これで。
取り敢えずギャラリーには飾られることは決まった。
あとの賞だが、
「まぁ金継ぎをしてなきゃ取れるかも知れへんけど、ねぇ…」
眞姫はさすがに参加賞のティッシュぐらいであろうという感で、しばらくは再び市場に皿を作って卸したりしていた。