【完】『大器晩成』
日が経った。
麟太郎から新人賞の受賞が決まったとの連絡が来たが、眞姫は例の父親の逮捕の件から元気がなく、
「もらって、大丈夫なんでしょうか?」
と麟太郎に打ち明けた。
すると。
「あなたはあなたの人生で、父親の道具ではないから、素直に賞は受けるべきでしょう」
それで何かあったら何とかしましょう、という答えが返ってきた。
「仮にマスコミあたり何か言ってきたらどうしようと…」
「もう少しわがままに生きなさい」
語気は強くないが、どこか毅然とした麟太郎の声である。
「あのこの騒ぎ立てるのは足軽雑兵のすること、あなたは堂々と構えていれば、それで良いのです」
眞姫は麟太郎の言葉を聞いてるうち勇気がわいてきたようで、
「分かりました先生」
そう言うと、電話もそこそこに身支度を始めた。