【完】『大器晩成』
◇13◇
授賞式の眞姫は、シルクの艶の美しい真っ白のブラウスに黒のロングのスカート、そこに真っ白い短めのデニムのブルゾンを羽織ったシンプルなファッションで姿をあらわした。
もとがホステスからグラビアモデルという経歴なだけに、
「美人すぎる陶芸家」
という噂で、カメラマンだけで廊下が手狭になるほど記者が来た。
「こんなに大勢の記者は見たことがない」
と同席した麟太郎が目を丸くしたぐらいであるから、普段どれほどの注目の度であったかが知れようというものである。
「桜岡先生、いいお弟子さんをお持ちになりましたね」
と話す者もあったが、
「どうせ愛人たぶらかしたんだろ」
という口性のない話も、聞こえてこない訳ではない。
「どの世界も嫉妬と羞恥で出来ているから、ゆめゆめ精進を怠って足下を掬われないように」
とスピーチをした眞姫も、そこは分かっていたようであった。