【完】『大器晩成』
◇3◇
マリエこと眞姫の見立てた麟太郎という男は、それまで見てきた男どもと明らかに違った。
まず。
胸元の開いた服のあたりに目をやることもなく、顔も大して見ない。
さらに。
いつも頼むのは烏龍茶で、しかもどうやら金額も自分で限度を決めてあるらしく、
「次で終わりにします」
というと、それ以上はすすめられても飲まない。
しかも。
必ず酒肴はチョコレートと決めてあって、食べるのもビターを六個と決まっている。
つまり。
女体目当てでもなく、無性に酒を飲みたい訳でもなく、付き合いであからさまに来ているという感が、ありありと分かるのである。
こんな。
変わった客は見たことがない。