ハピネスダイエット!~ダイエットしてあなたを振り向かせる!~
 どうするのが正解なのか。思考がフルで回転する。ここで何事もなかったように挨拶するべきか。忘れてしまっているフリをするべきか。とげとげしい態度にするべきか。

 反射的に取った対応は、


「お久しぶりです」


 と、体だけ向き直り、目は合わせずに、もごもごと話すことだった。

 終わった……そう思った。

 私の安定な学生生活はここまでだ。目の前が真っ暗になりそうだった。次に何を言われるのか、ただその恐怖だけが体を包んだ。


「よう、久しぶり。俺だよ、戸津。戸津龍介。同じ小学校だった。覚えてるか?」


 彼は、何もなかったように、にこやかに挨拶をしてくる。にこやかに、と言ったが、顔は見れていない。声の抑揚からそう感じとった。もうこの人の中では、あの当時あったことはなかったことになっているのだろうか。それとも、彼にとっては元々何もなかったのだろうか。


「覚えてます」


 顔を上げるには勇気がいる。でもこんなに露骨に避けている事を悟られるわけにはいかない。私は思い切って顔をあげようと心に決めた、刹那。


「あー、だめだめ。そいつまともに男と話さないぞ」


 突如として同級生の声が耳に入ってくる。
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