ハピネスダイエット!~ダイエットしてあなたを振り向かせる!~
 その状態で固まってしまった私に春ちゃんが声をかけてくる。


「え?」


 顔を上げると、春ちゃんがおどおどとしていた。いつもの春ちゃんらしくない。彼女が、そんな態度を取った事に気付いてから、私は初めて自分の状態がわかった。


「あ……」


 またやってしまった。


 私は何回こいつの前で泣いてしまうんだろう。


 感情を押し殺すことなんて、造作もないはずだったのに。私は中学三年間でぬるま湯に浸かりすぎたらしい。


 涙が頬を伝って、口の中に入った。さっきまで食べていたマスカットの味は塩味に変わり、掌のペーパーの中で、ゼリーは音もなく潰れる。


「そんなに変わりたいなら手伝ってやろうか」


 それに対して何も発せられなかった。

 食欲も、失せた。鳩尾(みぞおち)に、色んな物が詰まっていく感覚がした。


「あ、っそ。無視すんのね。じゃ俺もどうでもいいわ」


 そう言って、戸津は席に座ってスマホをいじりだす。


 この感情に名前をつけるならなんていうのだろう。ただの悲しみ? それとも違う。じゃあなんで涙が出た?


 もやもやしたものが、頭の中を駆け巡る。

 それから午後の授業はよくわからないまま終わり、よくわからないまま帰宅した。今日はお兄さんが来る日なのに。なんでこうも楽しくないんだろう。
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