興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「何がって自慢する程では無いんだが、気持ち良くないか?」

ベランダが面している方は玄関側とガラッと景色が違っていた。
向かいのマンション迄は充分距離が離れていた。何故なら、間を川が流れていたからだ。
こちらの通りとあちらの通りの間。
川沿いには桜並木。今は濃い緑の葉が生い茂っていた。
この川を通して吹き上げる風だったんだ。

「はい。サワサワした爽やかな風は、ここからのものだったんですね」

「いつもはな、そこで俺のパンツがそよいでいる。
これでも昨日の内に洗濯は済ませたんだぞ?…週末はいつも洗濯だ」

「あ、課長!~…フフッ。…アハハッ。はぁ。そよぐって…そんな事。想像してしまいました。パタパタしてるところ」

思わず掌で風にそよぐパンツを表現してしまった。

「フ。すぐ乾くぞ?」

課長も掌を動かして見せた。

「フフッ。…フフフ。もー、駄目。アハハハハハハッ…はぁ」

ツボに嵌まってしまった。

「アハハ、はぁ。私も、週末は洗濯してる事が多いです。シーツとか、カバーとか。
この前はショックで、…何も出来ませんでしたけど。…雨も降りましたし…」

「この前?…ショック?」

「はい。課長が姪子さんを抱っこしているところを見た日です。私が…思い込んだ日です」

抜け殻になった日です…。

「あーそれは…坂本と会った日という事か…」

ズキッ。…え。坂本さん。何だろう、凄く胸が…痛い…。

「あ、はい…。
金曜の夜です、…部長に出す書類を清書した日です」
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