興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
天気も私も鈍よりしていた。天気のことは解らないけど、私の方はなるべくしてなった。当然よ。……はぁ。
休みだというのに土曜も何もする気にならなかった。全く動かなかった。……全くは嘘だ。必要最小限の移動しかしなかった、が正しい。
ソファーの前に大きな丸いクッションを置き、埋まるようにもたれていた。
辛うじて移動する先はトイレと冷蔵庫。それを何度か繰り返した。
梅雨入りした訳でもないのに、土曜の夕方からずっと雨になった。
…明日も雨なのかも知れないと思っていた。…はぁぁ。

いつ日付が変わったのか…。
点けっぱなしのテレビでは天気予報だって何度か流れていたはず。
見たのか見てないのか、それすら記憶がない。
今日も雨。雨、雨……雨。
洗濯しなくていい理由付けにも出来てるけど。…。

はあぁ。…課長…あれは間違いのない現実なのよね。
パパって呼んでたしなぁ…。はぁ。りお、って、抱っこした女の子の事、優しい顔で見てたし…。…はぁぁ。パパ、……子持ち?
いつ?…いつ結婚したの?…ううん。そんな話は聞いた事がない。会社には内緒?そんな事、しないよね。芸能人じゃあるまいし。結婚した事、隠しておく必要なんてないんだし。子供が居るなんて…知らなかった。離婚経験があるのかな……。ん゙ー…。それなら、誰か知ってそうだし。……彼女…やっぱり居るのかな…。
……じゃあ、今付き合って居る人がシングルマザーとかで、あの女の子はその人の子供?
付き合いも長くなって来て、子供もすっかり懐いて、そろそろ結婚を、みたいな…。
だから、課長の事をパパ、パパって…。もう、そう呼んでる…。
凄く仲良くしてた。…端から見ても微笑ましくて自然だった…。

それとも……結婚出来ない人が相手なの?…不倫?…だったら子供は会わせたりしないよね。しかもパパなんて、ね、呼ばせないでしょ。
はぁ………馬鹿ね…。課長ならけじめを付けるはず。ううん。そもそも不倫なんて初めからしないと思う。妄想が過ぎる…。

んん〜。解らない。だけど、あの懐きよう…。あの女の子、知らない他人って訳ではないだろう。


カチャ。パタパタ。ガタン、ガタン。ドン。

ん〜?何だか騒々しくなって来たんだけど。…隣?
隣は空き部屋だったはずなんだけど。

ピンポ〜ン。

「は~い?」

誰だろう。
あ…はいって、うっかり…。私、どうしよう、酷い…。すっぴんだし、ルームウェアのままなんだけど。…うっかり返事しちゃった。
マスクして眼鏡しちゃえば、まあ、いいか。何とかなるでしょ。
ちょっと、待ってくださいね…。

カチャ。

「はい?」

あ。

「突然すみません、ご挨拶に伺いました。…隣に越して来ました。坂本、と言います。宜しくお願いします」

…なんて…爽やかな笑顔、だ。
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