興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
課長は先にベランダに椅子を出してくれた。

「藍原~」

「はい~」

キッチンから呼ばれた。

「水と、微?炭酸水と、ジンジャーエール…どれがいい~?」

「んー、ジンジャーエールで~」

「了解~」


水とジンジャーエールのボトルを手に課長がベランダに戻って来た。

「はい。どうぞ」

「すみません、有難うございます」

椅子はあるのに座らず、二人並んでフェンスに身を預けた。
はぁ。街灯に浮かび上がる桜の木の緑。
チラホラと散歩かな?急ぐ気配の無い人がそぞろ歩いていた。
こういう風景、なんだか凄くいい。
…夜風も気持ちいい。

「開けられるか?貸して?」

「あ、すみません」

「ん」

優しいな…。決してキャップが開けられない訳ではない。普段、自分で難なく開けている。だけど…この然り気無さが嬉しい…。
ボトルを嬉しくなって受け取り冷たいジンジャーエールを口にした。少し熱った頬にボトルを当てた。
…気持ちいい。

「はぁ…」

「藍原…」

「はい?」

「急かすつもりはないが…どうだろう。その…心配なんだが…」

「課長…」

ぁ…私がいけない。時間をくださいと言っていても、…それなりにだ。
だって、誰がどう考えても、即答して良い話なんだもの。課長…心配って?…何を…。

「あの、課長」

「ん?」

「…少しずつ、お泊りしてもいいですか?それで…慣れて来たら、…一緒に」

「…藍原、それって…」

ゆっくり抱きしめられた。

「…もう…いいのか?」

……課長。………も、う…?
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