興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
最近、藍原の部屋から藍原の気配が感じられない日が出来た。
夜中、うっかり物を落とす音もしない。
何かにぶつかってしまったような音も伝わって来ない。
朝、カフェラテの香りも、味噌汁の香りもしない日がある。
そんな日は、出勤する時、前を通ると、玄関先からほんのりとボディソープの香りがしてたりする。…深く詮索するつもりも無い。勝手に妄想が膨らむだけだ。考えたくもない内容のな。
課長の部屋に泊まって朝帰りしてる。そんな日が出来たんだ。
…そうか。…そうだ。…そうだよな。

隣同士なのに、最近は会社で顔を見る程度にしか会わない。
自然と出勤時間も変わったのかも知れない。少しズレただけで全く会わないものだ。
用がなければ話し掛ける事も無い。ただの同僚ならそんなもの。話し掛けようと、用を作る事も…しない。
コンビニに寄って、出たところで鉢合わせする事も無い。

俺はどこかでいつも藍原を探しているんだ。
俺の気持ちは最初から藍原にあるんだから、当たり前っちゃ、当たり前の事なんだけどな。

好きな人の幸せは望まなきゃなぁ。とは思う。解ってる。
楽しくしているのか?今、凄く楽しいのか?…愚問だな、楽しくない訳がない。
大事にして貰っているのか?もう…泣くような事はないのか?
…ないよな。ある筈もない。……望みが叶ったんだ。

……幸せなのか?
好きな人が幸せになるなら、それを望まなきゃな…。
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