興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
俺って情けないのかな。
本気のモノにはこんなに臆病なのか。気持ちはたかぶるのに。
結果が出る事が怖いからか。


「課長、休憩時間に少しいいですか?」

朝一に声を掛けた。

…坂本。はぁ。仕事以外の話、だよな。
無論、藍原の事しかない。ふぅ。
逃げる訳にもいかないが…。

「ああ、構わないよ」

「それでは、また、後で」

「ああ」

俺は何をしようとしているんだろう。
課長に何を言うつもりだ。


外から帰った。
課長に改めて声を掛けてみた。

立て込んでいるようだった。
先に行って待っててくれるか、直ぐ行く、と言われた。
返事をして取り敢えず、休憩室に向かった。

販売機で珈琲を買う。ブラックを選んで押した。
カフェラテ、か…、隣のボタンが目に入った。
カフェラテなんて、頭になかった頃には何でもなかった物。
関連性を持って記憶されてしまうと、それが飲み物であっても気になるものだな。
ふぅ。コップに注がれるのを待っていた。

「お疲れ様です」

…藍原。どうした…。
いつもと変わらない、平然としているように見えた。

何も触れない事が当然の如く。
会社だから、か。あれは、あの手紙は幻か?

「…お疲れ」

…。

どういうつもりだ。もしかして、わざと来たのか?課長は直ぐ来る。
俺と課長が今から話をするのを知っていて?…。来たのか?…探り?
…そんな事、藍原はしないか。だったら単なる偶然、か。
…何も。話すつもりもないなら、偶然でも、俺と一緒になったのは気まずいだけじゃないのか?
…解らん。
誰も心の中を全て晒している訳じゃないから。

何を思っているなんて、難し過ぎて解らない…。
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