興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
はい、と返事をする間も貰えず、もう口は塞がれていた。
ん…。モゴモゴ発する言葉は、口の中で感じてくれたのだろうか…。
課長が口づけたまま、フッと…少し笑ったのが解った。

「このまま寝室に行くけど、いいか?」

また直ぐ唇を食まれた。
あ、これでは…、例えノーであっても答えられない。

「…そんな顔するな…。どうせ返事が出来ないって、不服なんだろ?」

はいって…また言わせて貰えなかった。
口が出せなくても抵抗する術はある。暴れたらいいんだから。
…それは、しない。


もう、ベッドに下ろされていた。
課長は上着を脱ぎネクタイを解いている。

「…課長、明かりは消してください」

「ん?じゃあ、此処だけ点けるよ?」

丸いオレンジ色の照明。寝室の隅の床に、月があるような照明。仄明るく照らされた。

「このくらいは大丈夫?」

「…はい」

ベッドの上で上半身を起こし、後ろに手を付いていた。
…ドキドキしていた。だけど、平静は装っていた、つもり…。

「オレンジ色の柔らかい明かりは、よく眠れるみたいですね」

これからの行為から気を逸らすつもりで話し掛けた訳じゃない。ごく普通の会話のつもりだった。

「そうなのか?いつも寝る時点けて無くても、藍原はよく眠ってるじゃないか」

「ぁ…酷〜い…。これでも、…いつもドキドキしてるんですから」

「俺も。…今も、だ」

あ、…課長。
お互い、もう、ドキドキが限界なのは解っていた。
ベッドに腰掛けた課長は私の頬に手を当てた。

駄目、ドキドキがバクバクに…心拍数も血圧も右肩上がりよ。

何でしょう…、この捕われた感じ。課長が凄く色っぽいです。
やはり、いい感じの薄明かりも作用しているのですね…。

「藍原…。いいか、…もう貰っても」

これが…最後通告…。

「…はい」

直ぐ応えた。今度は返事はハッキリと確認された。
唇が触れると、背中に手を当てられ、ゆっくりと倒された。
課長の背中に腕を回した。
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