興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
…びっくりした。
今の話、聞かれてたのかな。
あ、私、咄嗟に君呼びしたけど、どうなんだろう。

「坂本…」 「藍原さん」

あ、一緒になっちゃった。

「どうぞ、先に」

譲られた。

「坂本君て、あー、えっと、聞きたい事があるの。
聞いてもいい?」

「早速、俺に興味を持ってくれました?」

…違うわよ。

「そうですね、これが興味というのならだけど。坂本君て、幾つ?」

何だか女子社員が聞き耳を立てているような空気を感じた。

「あ、年齢?29です」

わ、年上だった。じゃあ、早速、坂本さんにしないとね。

「ごめんなさい。伺って直ぐ掌を返すようですが、坂本君なんて呼んですみませんでした。
坂本さん」

「い〜え。言ってないのだから別に気にしなくて大丈夫です。…俺と藍原さんの仲じゃないですか」

げっ。
ガサガサッ。書類が擦れる音がした。…コントかって…。
…明らかにみんな、人の話に聞き耳をたてているわよね。

「ちょっ、ちょっと待って。変な事、いきなり言わないでください」

もうこれ以上、訳の解らない誤解を増やしたくないのに。なんて言い方をするのですか…。そんな仲なら年齢なんて聞かなくても知ってるってなっちゃうでしょ。

「あれぇ?だってさ、住んでるところだって同じじゃないですか」

ちょ…なんて事、言うのよ。もう…馬鹿~。
ガサガサッ。ガタンッ。(えーっ。え゙ーっ)……更にコントよ。
そんな事言うから、動揺して、みんなショックを受けてるでしょ?
もう…、声にならない悲鳴まで聞こえて来そうよ。もっと…、言うなら言い方ってモノがあるでしょう?
…私に視線が。
このままじゃ誤解されちゃうから…。

「わ゙ー、もう…、ちょっとこっちに来てください」

「えっ、もう?早速二人になりたいんですか?」

な゙、何言ってるのよ!

「あー、もう、黙って…。またそんな事…いいから早く来てください…」

この口を塞いでしまいたい。手を引いた。

「あ、そんなに急かされても、慌てないでくださいよ」

あ゙…も゙ー!!何なんだ、この男。…絶対、わざとだ。
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