興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「藍原…」

抱きしめられた。

「はぁ…柔らかくて、気持ちいいな…」

あ…。

「課長?ごめんなさい」

「ん?」

「私、ボン、キュ、ボンじゃなくて」

「ん?何だそれ?」

私が倒れた時、運んでくれたのは課長だった。
あの時、課長は慌てて駆け寄ってくれた。

「貧血で倒れた時…もう少しお肉があったらいいみたいに言われました。だから、課長は、めり張りのある、所謂…そういう身体が好みだと…」

両手で宙に曲線を描いて見せた。誰も、めり張りボディーの方がいいに決まってる。

「あぁ、別に。そんな事は無い。
倒れるくらいなら、もっと太れって言ったつもりだったんだ。女性に太れとか、言葉遣いは気を付けないと嫌がるだろ?」

「言われ方次第ですね」

「だろ?で、その言葉で、俺がめり張りボディーが好きだと?」

「…はい」

「思い込みが激しいな…。んん、藍原…綺麗事じゃない、本心を言う。
身体が好きで好きになるならそんな関係だろ?
俺は、藍原が好きで、その上で藍原の…身体も好きだ」

ぼっ。か…課長ー。

「…俺の手に丁度収まる胸も、大きめの腰も好きだぞ?」

…課長……、…それ、微妙です…。
何も形容せず、胸も腰も好きって言ってくれた方がまだマシです…。いや、それすら要らないです。あまり具体的なのは…ちょっと、微妙です。

「いいんだ。好きなんだから、何もかも好きなんだ」

言い終わらないうちに抱き寄せられた。
はぁ。いいって言うんだから、いいのかな…。めり張りは目指しても体質的に無理だし。

「納得?」

「はい…」

渋々返事をした。

「藍原、泊まりじゃなくて、一緒に住もう。もう、いいよな?大丈夫だよな?」

「はい」

…はい、と返事をした。…もうこれで、後戻りはない。結婚へと前進して行くのね…。
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