興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
更に腕を掴んでフロアの外に出た。


「……も゙う。ちょっと!ふざけ過ぎ。さっきのは何ですか?……からかわないで。あんな…何て事言ってくれるんですか…」

「だって、事実だし」

だって、って。悪びれる感じもない。むしろ…、それがどうしました?的な顔つきをしている。
ん゙ーもう…。

「…事実って言ってもですね、違うじゃないですか。住所は同じでも、正確には部屋番号は違います。別の部屋でしょ?もう…、何であんな、わざわざ誤解を招くような言い方をするんですか?」

もー、きっと今頃みんなで、今のは何って話になってる。絶対してる。

「別に」

別にって…。はぁ。何この人…。いい人なのか変な人なのか。…どうしよう。どんな顔して戻ったらいいの?もう…嫌だー。

「困らずに済む方法、あるけど?」

「え?」

えー…何をどうしたら。どうしたら困らないで済むと言うの?
確かに住んでるところは同じだけど…。部屋は違う。…そうよ。ただの隣人だと言えば誤解は解けるのよ。そうよ、何よ、もう。
落ち着いて話を聞いて貰えばいいだけの事なのよ。
最初からそんなに焦る事でも無かったんだわ。その場で笑い話にしてしまえば良かったのよ。ジョークジョーク。
そう、そう、それでいいんだった。

「俺達、つき合ってるって言っちゃえばいいだけです」

そうそう、言っちゃえばいいのよ。…え、はぁあー?

「な、今度は何を言ってるんですか?」

…はぁ、…もう…ぁ。あ、あ……。
……バタッ。私は気を失った。いや、睡眠不足による貧血でふらつき、倒れたんだ。
元々ある問題に…更に色々あり過ぎた。

「おっ、と。藍原さん、大丈夫?藍原さん?…」

何だかバタバタ足音が聞こえる。近付いて来てる。

「藍原!大丈夫か?」

課長…ですか?…。

「ふら〜となったんで貧血じゃないかと」

…坂本さん…です…か?
どうやら頭を打たずに済んだのは、坂本さんが受け止めてくれたのですね。

「俺が医務室に運ぶよ。坂本君は大友が待っているから、一緒に外回りに出てくれるかな」

「はい、では…お願いします」

課長によって運ばれるようね。…嬉しいけど…恥ずかしい。でも、こんなことは二度とないかも。
…もう、…力尽きます。 クラッとします。チカチカします。

「藍原、大丈夫か?運ぶよ?」

「あー、…は、い。……すみませさん」

声を掛け、そっと抱き上げてくれた。あ、こんな運ばれ方をされるなんて。もう遅いけど、ダイエット、しとけば良かった…。

「よっ、と。大丈夫か?」

立ち上がった。

「…はい」

あ…重いですよね、ごめんなさい、課長。こんなの…凄く恥ずかしいです。
そして女子社員のみなさん、何だかごめんなさい。
綺麗な男子二人を、朝から独り占めしたみたいになってしまって。
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