興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「紬。…紬?…」

「…う、ん、…ん」

「そろそろ起きないか?」

…ん?……え?尚、紀さん?え?………あ、そうだ、そうだった。
んん〜。布団の中で伸びをした。

「おはよう、紬」

「…尚紀さん。……お、おはようございます…」

おはようって………顔…凄く近いんだから…。

「紬、昨夜は有り難う。フレンチトースト作ったんだ。食べてみないか?
あ、俺ん家で作って来たから、勝手に台所いじったりしてないからな」

「は、い。…え?もう、あ、さ……?」

返事をしながらも頭はまだボーッとしていた。

「…紬。紬って、もしかして、朝弱いのか?」

ゆっくりとした動作が何とも言えない…。

「あ、ふ、…は、い。弱いっていう程では。…直ぐ…繋がります…。急に起きたら危ないから……、こうして段階を踏んでいるだけです。一人暮らしでは、転んで気を失っても誰も助けてくれませんから」

紬はまだ身体を起こさず、足首から先を曲げたり伸ばしたりしているようだ。布団がモコモコ動いていた。
それからやっと上半身を起こし、まだ座ったままで話す。

「お、おぉ、もう繋がって来たみたいだな」

ほんのさっき迄、紬に抱き着かれていたんだと…思い出してちょっと動揺した。

「はい。えっと、フレンチトーストですか?私、大好きです。珈琲入れます。尚紀さんも一緒に食べますよね?」

「あー、俺のは俺ん家にあるんだ」

「え、そうなんですか?
てっきり一緒に食べるモノだと思ってました。
あ、鍵はもう、開いたんですもんね」

「ああ、うん。そうだよ」

あ、大家に誤解された事、話しておいた方がいいかな。ま、いいか。

「折角なので、持って来て一緒に食べませんか?
私、フルーツとかも用意しますから」

「いいのか?」

「はい、いいですよ?」

何だかちょっとどころか、距離が急に近くなった気がするな。
朝だからか、抵抗はないんだな。…不思議ちゃんだな。

「じゃあ…、お言葉に甘えて取って来るとするか」

「…はい。あ、珈琲入れますけど、ブラックですか?私、普段はブラックなんですけど、朝はカフェラテにするんです」

「じゃあ、俺もカフェラテにするかな。出来たら甘くないやつで」

「はい。承知しました」

何かやっぱり違う気がする。…一夜を共にしたからかな。…なんてな。何も無いっつうの。

紬がベッドから脚を出して出た。キッチンに行くようだ。
あっ、…短パンとノースリーブだって事、忘れてた。紬も忘れてるんじゃないのか?
脚が…白いんだよなぁ。思わず見ちゃったよ…。腕も白いし、長いな。…色々……見ちゃったよ…。しかし…、無防備というか。…あ、そうか、そこはいつもの朝だって思ってるから気がついてないのかもな。
…フレンチトースト取りに行こうっと。
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