興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「あ、はい。免許は持っています」

「ビール、飲まなかったよな?大丈夫だよな?」

「はい」

あ、そうか、そういう事よね。…だけど。

「じゃあ、帰りの運転、頼もうかな」

「え、はい…でも」

待って。課長の車を運転するのはいいけど、それで課長を家まで送り届けた後、私は?どうしたら?
…あ、最寄り駅から帰ればいいのか。
そうだ、そうよ…。何を都合よく勘違いしようとしたんだろ、私。

「不安か?運転に自信が無いなら無理にとは言わないが。代行、頼んでもいいし」

「それは大丈夫です。車は好きで運転していますから。車種が違うのが若干不安ですが、その程度の不安です。
大丈夫です、ペーパードライバーではありませんから」

そう、私は車好きで、実家に帰ると父親の車を運転している。
課長の車もセダンだから、大きさに不安も無い。

「そうか、運転好きなら大丈夫そうだな。じゃあ、帰りは藍原に任せたからな。
うちからは駅まで送るから、電車で帰って貰っていいかな。勿論、運賃は俺がもつから」

「はい、でも電車賃は大丈夫です」

「そういう訳にはいかないよ。余計な事をして貰うんだから。
あー、これでこのノンアルがまたビールだったら笑ってしまうな」

「さすがに、それは…」

課長は、もうどっちを飲もうと大丈夫は大丈夫だ。ビール、どうぞって勧めてもいいんだけど、きっと自分だけって訳にはって、遠慮するだろうな…。

「一応、口付けて確認して見るか?まだ少しにしといてくれよ?」

「はい」

恐る恐るというほどでは無いが、影響の無い程度に少しだけ口に含み飲んでみた。

「…はい、…ん、多分、大丈夫です。ノンアルです」

よくは解らないけど。

「そうか。それじゃあ…、帰りの心配も無くなった事だし、食べようか」

「はい」

不謹慎だけど、一瞬、邪な気持ちが過ぎった。
これも本物のビールで、私がうっかり沢山飲んで酔って…。
泥酔した私を、課長はどうしたのだろうって。
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