興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「…坂本と部屋が隣同士だなんてな…。偶然とはいえ、驚いたよ」

え?

「あ、はい。私もビックリしました。こんな事ってあるんだと思って」

「…そうだよな。金曜から知ってたって言ったよな?」

あ、…。話す事になってしまった…でも、課長の事には触れなければいい。

「…はい。それも何だか、妙な出会いなんですが。
…私が買い物した荷物を落としてしまって…そしたら、大丈夫ですかって、声を掛けてくれて。拾い上げてくれて」

「そうか。結果として凄い偶然だな、同じ会社の人間だった訳だから」

その時はそれっきりだったのか…。

「はい。その上、日曜に引っ越しの挨拶だって、また会って、そして月曜ですから。それに…、あんな、意味ありげに色々と言うから。もう、はちゃめちゃです」

「ん。まあ…、悪気はない、冗談のつもりだったのだろう。坂本は掌握に長けている感じだな。仕事も良く出来ると聞いている」

ん〜ん。私もそう思う。人の中に遠慮無く飛び込んで来る感じ。だけど、自然とフォローする感じで、嫌な気持ちが残らない気がする。

「そうですね。それに、意外にいい人です」

「フ。…そうだな。…意外にか…。
ところで、藍原は兄弟は居るのか?」

「はい、兄が一人」

「そうか。もう結婚はしているのか?」

結婚…。

「…はい」

「ん?どうした。悪い、まさか、…離婚したとかか?聞いたらまずかったか」

「あ、違います。それは大丈夫です。多分円満にしてると思います」

「ほぅ。それは良かった。一瞬、悪い事を聞いたかと思ったよ。じゃあ、なんでそんな様子になるんだ?」

微妙な返事の仕方をしてしまったから気に止まったのかな…。

「それは…私が…、結婚はまだかって、親に言われているからです。
その事がふと過ぎって…」
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