興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「ここだ」

部屋だった。当たり前よ…初めからこれでいいのだから…。

「そこの端に入れてくれるか、そのまま突っ込んでいいから」

「はい」

言われたようにそのまま枠に駐車した。エンジンを止めた。


「はぁ…」

「サンキュ。フ、大丈夫か?…疲れさせてしまったな」

「あ、いえ、違います。ほっとしたので。無事…、課長の部屋につけたと思って」

「流石に言うだけあってスムーズな運転だったな」

「いえ…」

内心はドキドキ…。動揺してそのせいでハンドルを切り損ねたらどうしようかと思った。

「…うん。では今度は俺が徒歩で送るとするか」

「あ、駅ならだいたい解りますから、大丈夫です、一人で帰れます」

「そうか。なんて言うか。夜一人で歩かせるなんてするか。それに俺が切符を買うんだから」

……課長?…何かちょっと、様子が変じゃないですかね。
あまり深く探らない方がいいかな。
何か雰囲気がおかしくないですか、なんて聞いて、返された言葉の返事に困るくらいなら最初から触れない方がいい。

「ではお願いします」

「ん」

きっと5分もあれば着いてしまうだろう。
コツコツと、歩き始めた課長の後ろに着いて歩き始めた。

痛っ。え?
課長が急に止まったものだから、つんのめって顔から背中に衝突してしまった。

「ご、ごめんなさい。あ゙、背中に…課長、ごめんなさい」

落ちるかな…。パタパタと軽く背中を掃った。ファンデーションが少し付いたからだ。

「はぁ、…藍原。俺、藍原に言っておかなきゃいけない事があるんだ。
いや、言い方が違う。
多分、謝らなければいけない事があるんだ」

「はい?」

一体、何を急に。

「藍原の恋人の噂はだな。…俺のせいかも知れないんだ、多分…」

え…ぇえ?!

「あ、の…どういう事ですか、課長…あの」

どういうこと…何か事情を知ってるってことだ。

「ずっと考えてた………昔の事…中々クリアに思い出せなかった。でも、やっと思い出したんだ。…はっとした。昔、俺が酔った勢いで適当に言った事が、真しやかに広まったかも知れないんだ。いや、多分ほぼ間違いないと思う」

…どういう事?昔って、いつ?どこで、何て言ったのですか?
……まさか、課長が私の彼とかって、言ったのでしょうか?
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