興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
…本当だ。まだほぼそのままと言った方がいいくらい、段ボールが部屋の隅に積まれていた。
引っ越しても直ぐ仕事だと、必要な物から出していく感じになるものね。
平日は疲れているだろうし。中々片付かないものですよね。

「本当ですね。坂本さん?片付ける物とか良かったら手伝いましょうか?」

お節介だな、私。最近知り合ったばかりの女に、色んな物、触られたり見られたくないわよね。

「ん、いや。気持ちだけ頂くよ。出さなくて困らない物は要らないって事でもあるから。取り敢えず現状のままでいいんだ」

確かに。引っ越しの機会に要らなくて捨ててもいいかなと思っても、忙しければ取り敢えず全部パックして運んでしまうものね。
時間に余裕がある時に振り分けて片付けたいだろう。今回は特に急な引っ越しになっただろうし。

「藍原はもう風呂入ってるよな?」

抱きしめた時、泊めて貰った夜と同じ香りがしてたから解った。

「はい」

「俺はまだだから入って来ていいかな」

「どうぞ、どうぞ」

「何もないけど、水とか珈琲とか適当に。あ、テレビ点けとくか。ソファーはカバー外していいから、座っててよ」

「はい」

…ソファーにもまだ座ってないんだ。

「じゃあ、風呂入って来る。あ、大丈夫だよな?風呂上がりパンツとTシャツでも」

本来はパンツだけでうろつくんだけど。

「…大丈夫です。既に免疫があります」

「だよな。んじゃ、心置きなく」

…心置きなくってのも。何だか…ね。普通にいつも通りってことでいいじゃないですか。

ソファーのカバーを外した。多分、捨てるのだろうけど一応綺麗に畳んでおいた。勝手な判断でクシャクシャにする訳にはいかない。

……なんだか…自分と同じ部屋だと思うからだろうか。人の部屋にお邪魔している気持ちにはならなかった。
置いてある物は違う。窓だって有るし、間取りも違うのに。

テレビを観ていた。
深夜番組はある意味面白いから好き。言いたい事を自由に言っているから。
私のお気に入りの番組が放送されていた。
笑って観ながら、いつしか眠っていた。
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