興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「…坂本さん?」

「お、おぅ、目が覚めたのか」

「はい。起きたら、あれって。それで、あ、そうだ、坂本さんの部屋だったんだと思って」

「あー、寝てたから運んだんだ」

「すみません。折角運んで貰ったのに、起きて来てしまったら何だか運び損ですよね」

「フッ、ハハハ。そんな事は無いさ」

「あの、それより、もしかして…、気を遣ってソファーに寝ようとしているのではないですか?」

だから私一人で寝ていたんじゃ…。

「あー、それは違うぞ?風呂上がりで暑いから、まだ起きていたんだ。丁度、そろそろ寝ようかと思ってたところだ」

「そうですか。あの、座ってもいいですか?…隣」

「ああ、遠慮なんかしなくていいのに」

「では」

少し離れて膝を抱えるように座った。

変なもので、目が覚めて一人じゃないと思ったら、居る人の側に居たくなった。だから起きて来た。
これが一人じゃない、人恋しさというモノだろうか。

「藍原…、話したい事があるなら、聞くだけでもただ聞くけど。
必要ないなら別にいいし」

「…はい。…今は近くに誰かが居てくれるという事に甘えています。だから…」

「そうか。まあ、藍原のペースがあるからな。
俺、ボチボチ寝るよ?藍原も、もう寝るか?
それともまだ起きてるか?」

「あー、寝ます」

「フ、じゃあ、寝るか」

「はい」

意味のない点けっぱなしのテレビを消し、部屋の明かりを消した。

「キャ」

「おー、悪い悪い。いきなりだったな。真っ暗になってしまったな」

リモコンのスイッチで寝室の明かりを点けた。
藍原は咄嗟に俺に抱き着いていた。

「しかし…藍原が悲鳴を上げて、抱き着くポイントが良く解らん…」

「ごめんなさい、怖くて…暗くなってびっくりしたので…すみません、近くに居たから」

言い終わると離れた。
だけど俺が抱き着いても悲鳴は上げないだろ?
俺も抱き着かれたからといって悲鳴は上げないけど。…そこは男だからか。
まあ、考えても解らないものは解らない。

「寝る時、真っ暗じゃなくて大丈夫か?
俺、薄明かりがいいんだ」

「大丈夫ですよ、坂本さんのいいようにしてください。私も真っ暗は、苦手なので」
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