興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
言ってしまった…。ちゃんと話せていたかな。また言うだけ言って逃げるように戻って来てしまった。でも、これで終わった。
告白として聞いて貰えていたかな。

……はぁ。5年の思いもこれで終わりね。
後は忘れるだけ。うん。
はぁ、あと2時間弱。仕事仕事。公私混同してはいけない。
今日はもう呼ばれる用はないと思う。勿論、仕事上の事だ。

課長も呼ばれて戻って来た。仕事、始めたようだ。急ぎだという書類に目を通し始めた。
トンと判子をついた音が聞こえた。待っていた社員に渡した。
こういう時、席が微妙に近くにあるっていうのも…辛いかも。こっそり様子を見ていた分には良かったんだけどな。

「藍原〜」

え?

「は、はい」

「ちょっといいか」

「はい」

いけない、直ぐ行かないと。…だけど、何?何故呼ぶの?

「悪い、話が途中になって」

「え」

「俺、今、中々時間が作れなくて…また都合のつく日に声掛けるから」

「え」

どうして。

「話がある。まだ俺の話をしていない。言っておきたい事があるんだ」

「あ、いえ、もう。大丈夫ですから」

これ以上の決定打はもう要らない。話なんて…私の気持ちを知って、断りの言葉ならいらない。その上、わざわざ本人から打ちのめされる言葉を聞かなくても解っているから。

「あ、おい、藍原」

全く…。何がもう大丈夫だ。これではさっきと何一つ変わらないじゃないか。呼んだ意味が無い。
大丈夫ですから、ってどういう意味だ?こっちに話があると言っているだろうに。
何故、毎回聞こうとしないんだ。
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