興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「それで、何で終わりましたになる?」

誤解も解けたなら、お互い好きなら上手くいきそうじゃないか。…お互い、好きならな。

「はい。課長にはもう結婚を考えている人が居るようなので。思い続けていても、気持ちが届く事はありませんから。
後は私の気持ちの置き所なんです。直ぐには忘れられないでしょうけど」

結婚?へぇ…決まった相手が居るのか…。本当か?

「そうか…。だけど、それ、ちゃんと聞いたのか?居るようなのでって、言ったよな。想像なのか?
課長が、例えば、藍原とは無理なんだ、とか、そういう事、はっきり言われたのか?」

「え、でもそれはないです…もう無理な事だから…」

なんだ、まだケリなんてついてないじゃないか。

「課長…また声掛けるって。…まだ話があるって言ってましたけど、その、結婚の事だと思うんです。だからもう…。駄目な理由、課長の口から聞きたくないです、課長の好きな人との事は。聞かなくていいんです」

「話を聞かないまま逃げたのか?
はぁ。…そんな事でいいのか?よく確かめもしないで。それでは終われないだろ?駄目かどうかも解らないじゃないか。違ってたら後悔するぞ」

俺は…何言ってんだろうな。

「駄目なら駄目で、課長の口からちゃんと言われてからの事だ。ケリをつけるには早過ぎる。そんなんで心が納得出来るはずがないだろ。強引に諦めようなんて意味がない」

「坂本さん…でも」

だって、課長には…。

「課長に結婚を考えている人が居るっていうのも…藍原の間違った思い込みかも知れないだろ?聞きたくないなんてだな…。二人で居るところでも見たのか?それもないんだろ?例え見たとしてもだ、それだって、見ただけでは関係性は解らない、悪い方の想像を勝手にしてるだけだ。
課長もまた声を掛けると言ってるんだったら、話しておきたい何かがあるんだよ。何にせよ、先ずきちんと話を聞いてみる事だな」

吹っ切るならそれからだろ。吹っ切らないで済むかもしれない可能性だってあるんだから。

…。

「…もう、いいんです」

ぁあ?

「例え、話の内容が良いモノでも…悪くても。今日課長にした話が私に取って大事だと同じくらい、いいえ、課長のする話がもっと大事な話だと課長が思ってくれているのなら、こんな悠長なのってないと思います」

藍原…。だけどな…。

「二人で話をしている時に邪魔が入ったとしても、言うべき言葉、伝えたい言葉は、短くにだって取り敢えず言えたはずなんです。重要なポイントだけでも、です。
それは、昨日だって、今日だって、ありませんでしたから。…きっと期待するような、そんな…いい話ではないんです。いい方に期待したら、尚更惨めになります。だから、もういいんです。私は私で…、話をして…ケリは付きましたから」

課長は取り敢えず的には話したくない感じかも知れないじゃないか…。
だから、きちんと時間を取って話そうとしてるんだと思うんだが。それだからこそ、大事な話だとも取れるんだ。……ん?藍原…泣いてるのか…。

「…やっと泣けます。…終わりましたから…」

違うだろ、藍原…。終わったんじゃなくて、無理矢理終わらせようとしてるだけだろ?
そうやって自分を追い込んで…だから…涙が出るんだろ……。
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