興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
それからプツリと何も喋らなくなった。
乱雑で殺風景な部屋に、テレビの音だけがずっと小さく流れていた。
時々、藍原の涙を拭いながら、ずっと背中を撫でたりトントンしていた。
俺の左胸は濡れた。時折長い息を吐き、息を詰め藍原の泣き方は静かになった。
だいぶ時間が経った頃、藍原はどうやら眠ってしまったようだった。
しがみつくようにして……俺のシャツを握っていた手が力無く滑り落ちた。泣き疲れたようだ。
……はぁ。…こんなんで終われるはずがない。ずっと燻り続けるだけなのに…。
抱き直して抱え上げ、ベッドに運んだ。
起こさないようにゆっくり寝かせ、布団を掛けた。
子供のような顔で眠っていた。
濡れて張り付いた前髪を流すように撫でた。
…はぁ。
あ…スイーツ。袋ごと落としてしまったままだった。…大丈夫か…。冷蔵庫に入れておくか。
こうして泣いたことで、本当に元気になれるのなら、藍原だって食べられるだろうから。
買った時は誤魔化しの為の買い物でも、状況が変われば食べられるはずだ。
はぁ。俺が気にしても仕方ないだろうが。
今の課長の心情は解らない。昔のことも知らない。こっちに居なかったからな…。
だけど、つき合っている人が居るようだと後輩に言った時の課長は、藍原の事が気になっていたという事だ。だから、つかなくていいそんな嘘を…咄嗟に。
誰にも手を出させない為の嘘、だったんじゃないのかな…。それとも、こういう酒の席で持ち出して話すんじゃない、みたいな、んー、話の種にすることを避けるため…。だけど…その後がない…。好意はなかったのか…。
やはりそういった場の、ただのノリの話だったのか…。それとも、藍原のように、思っていても言わなかったのか…。
はぁ。5年前の課長。
今の俺くらいか。バリバリ営業してたんだろうな。
優秀な営業マン…。人それぞれだが、女性に対しても、とても情熱的な年齢だと思うけど。
課長は男前だ。身長も高い。…仕事も出来る。信頼も、ある。
恋愛遍歴はどうなんだろうな。
結婚するって、本当なのか?…そんな感じはしないけどな。まあ、職場の顔しか知らないから、あのくらいの年齢になれば上手く切り替えくらいするだろうし。
藍原…、終わりましたと言って……泣いて…。自分から終わらせた…。
…ふぅ。そんなの無理だろ。そんな簡単に…無理だろ。
「坂本さん…」
「ゔぉっ。…びっくりしたぁ…はあぁぁ」
ソファーに座る俺の後ろから首に腕が絡んできた。
乱雑で殺風景な部屋に、テレビの音だけがずっと小さく流れていた。
時々、藍原の涙を拭いながら、ずっと背中を撫でたりトントンしていた。
俺の左胸は濡れた。時折長い息を吐き、息を詰め藍原の泣き方は静かになった。
だいぶ時間が経った頃、藍原はどうやら眠ってしまったようだった。
しがみつくようにして……俺のシャツを握っていた手が力無く滑り落ちた。泣き疲れたようだ。
……はぁ。…こんなんで終われるはずがない。ずっと燻り続けるだけなのに…。
抱き直して抱え上げ、ベッドに運んだ。
起こさないようにゆっくり寝かせ、布団を掛けた。
子供のような顔で眠っていた。
濡れて張り付いた前髪を流すように撫でた。
…はぁ。
あ…スイーツ。袋ごと落としてしまったままだった。…大丈夫か…。冷蔵庫に入れておくか。
こうして泣いたことで、本当に元気になれるのなら、藍原だって食べられるだろうから。
買った時は誤魔化しの為の買い物でも、状況が変われば食べられるはずだ。
はぁ。俺が気にしても仕方ないだろうが。
今の課長の心情は解らない。昔のことも知らない。こっちに居なかったからな…。
だけど、つき合っている人が居るようだと後輩に言った時の課長は、藍原の事が気になっていたという事だ。だから、つかなくていいそんな嘘を…咄嗟に。
誰にも手を出させない為の嘘、だったんじゃないのかな…。それとも、こういう酒の席で持ち出して話すんじゃない、みたいな、んー、話の種にすることを避けるため…。だけど…その後がない…。好意はなかったのか…。
やはりそういった場の、ただのノリの話だったのか…。それとも、藍原のように、思っていても言わなかったのか…。
はぁ。5年前の課長。
今の俺くらいか。バリバリ営業してたんだろうな。
優秀な営業マン…。人それぞれだが、女性に対しても、とても情熱的な年齢だと思うけど。
課長は男前だ。身長も高い。…仕事も出来る。信頼も、ある。
恋愛遍歴はどうなんだろうな。
結婚するって、本当なのか?…そんな感じはしないけどな。まあ、職場の顔しか知らないから、あのくらいの年齢になれば上手く切り替えくらいするだろうし。
藍原…、終わりましたと言って……泣いて…。自分から終わらせた…。
…ふぅ。そんなの無理だろ。そんな簡単に…無理だろ。
「坂本さん…」
「ゔぉっ。…びっくりしたぁ…はあぁぁ」
ソファーに座る俺の後ろから首に腕が絡んできた。