興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「ごめんなさい…」

足音も無く近付かれたのか、俺が考え込んで気が付かなかったのか。
とにかく、不意を突かれた。半端無く驚かされた。

「べ、別にいいんだ。どうした、だけど、マジでビビった。…ふぅ…起きたのか…」

しゃべりが…俺、動揺してるな。

「はい…一人だと眠れません」

…はぁ、……なんて事言うんだ…。全く、…もう。それに何だ。この、首に腕を掛けた抱き着きは。
はぁ…、勘弁してくれよ…。腕をほどきながら気を反らせようとした。

「藍原。藍原がくれたスイーツ、食べないか?」

「あ、はい。食べましょうか。じゃあ、珈琲入れましょうか?」

「ああ、じゃあ、お湯沸かすか」

「はい」


二人並んでインスタントの粉を入れ、お湯が沸くのを待っていた。

「坂本さん」

「ん?」

「私、これからもずっと、…坂本さんと居たい」

…?。あ゙?あ゙ー?!どのタイミングでこんな事を言ってる…。寝惚けてるのか?
俺と居たいだと?何ぃ?一体どういうつもりだ。あ、…ソフレとして暫くはって事か?今日だけの事か?…藍原、…どういう意味だ。

ピーッ。

「お、沸いた」

…無視した訳じゃない。これだってタイミングだ。湯が沸いたんだ。
それに、こんな呟きにどう返事するんだ?…真意が解らない、寝起きの…気まぐれかも知れないんだし。

「ほら、冷蔵庫から出して、あっちに持って行くぞ」

「…うん、はい」

「スプーンとかフォークとかは?要るのか?入っているのか?」

「大丈夫です、入れて貰ってます」

「じゃあ、珈琲は?藍原はミルクタップリにするのか?」

「えっと、ブラックで」

「ん、解った」


藍原の分のカップを渡した。

「ほい、熱いぞ、気をつけろ」

「有難うございます」


冷蔵庫から取り出したコンビニの袋を広げて覗いた。

「また…随分と買ったもんだな…それに…ほら、また崩れてる、これ」

落としたのは俺だけど。あの状況では仕方ない。

「…はい…今日はとうとう、スイーツ爆買いのお姉さんと言われました」

「フ、ハハハッ。そりゃあ言われるわな。これだけ買って、ほぼ連日と言っていいくらいの印象だろうから。コンビニにしたら、いい常連さんだな。あ、あれだ。じゃんけんに負けて、残業の差し入れ的な買い出しに来たとか、思われてんじゃないのか?で、やたらじゃんけんに弱いヤツだって」

……続かない方がいいけどな、こんな買い物。

「…はい。…そうかも知れないですね」
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