興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
☆○○
コンコン。

「…失礼しま〜す。お〜い葵…どうだ?」

控え目に声を掛けた。
葵のベッドは入り口の側だ。

「あ、匠…。どうしたの?びっくりするじゃない」

仕事帰り、里緒を迎えに行く前に病院に寄った。
里緒の母親は、4週間置きの検診の時に、流産の畏れがある事が解り、暫く安静に居る為に入院する事になった。
当初の予定は一週間程度という事だったが、状態が芳しく無く、様子を見つつ長引いていた。

「どうかなっと思ってさ。ただじっと寝てるのも退屈でしんどいだろうと思って。顔見に来てやった」

小さめの声で話し掛けながら周りに軽く会釈した。
女性ばかりの病室は正直苦手だ。

「うん。有り難う…ごめんね。最初は一週間って事だったじゃない?延びてるから匠に悪くて」

「悪いとか、そんな問題じゃ無いだろ?
今、大事にしなかったら大変な事になるんだし。
どうだ、良くなってるのか?」

「うん。後、4、5日様子を見てって言ってたでしょ?順調なら多分予定通り退院出来るはず」

「はぁ、そうか、良かったな」

「うん。ねえ?里緒、大丈夫?大変じゃない?」

「ああ、大変は大変だけど大丈夫だ。元気だぞ。仲良くやってるから大丈夫だ。
あ、そうそう。この前だけど、里緒のやつさ、俺にご褒美のチューしてあげるとか言うから、焦ったよ」

「え〜?何?そんな事言ったの?フフ」

「ああ。お母さんがしてるの見たからって言ってたぞ…。そんな事、子供から聞くと、恥ずかしいもんだな」

「もう…。里緒ったら…。本当、恥ずかしい…」

両頬に手をあて照れて見せた。…ハハ、こういう…人前だと、しおらしく可愛いげのある仕草をするんだよな。

「俺さぁ、里緒と風呂に入ってるけど、それってヤバくないか?いいのかな…」

「え、な〜に?気にしてるの?大丈夫よ。女の子でもまだ小さい子供だから大丈夫よ」

「そんなもんか?」

「うん。大丈夫よ。きっとその内、一緒には入らないとか直ぐ言うようになるんだから、今だけよ?そんなものよ」

「それはそれで言われたら寂しいもんなんだろうな。
でもさ、やっぱり母親は凄いな。葵、仕事しながら子育てしてるだろ?凄いよ」

「尊敬してくれる?お母さんの凄さって、忘れないでよね」

「ああ。だけど、今は身体は大事にしないといけないんだけど、また、産休取って様子見て、仕事復帰するつもりだよな?」

「うん。そうするよ?」

「折角さ、頑張って就活して入りたい会社に入った訳だし、やりたい仕事はずっと続けたいよな?やっぱり」

「うん」

「俺もさ、協力出来る時はするからさ、仕事頑張れよ」

「匠…甘えてもいいの?有難う」

「何もかもって訳じゃないからな。勘違いするなよ?」

「解ってる。でもその言葉は心強い。有難う」
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