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「俺、団子虫たちを捕まえてこういうところに閉じ込めたりなんてしないですよ」

安心してください、と虫王子はわけのわからない言葉を口にする。

「ここに入れようとしたのは、彼らを家に安全に連れて帰るためだけであって、家に着いたらちゃんと飼育セットがあって、そこはいい土壌だし適温に保たれてるしそれに」

「もういい」

家の中で、団子虫を飼育しているだって?
一瞬、想像してしまいそうになって、あわてて話をさえぎった。

「わかったから、もうその話はいい」

「わかってもらえましたか?」

虫王子は満足そうに微笑んで、リュックサックの中に虫かごをしまった。

「コアオハナムグリさんも虫がお好きなんですね」

「いや、全然。むしろ大嫌いだから」

さっきからなんだか盛大な勘違いをされている。

このへんでしっかりと否定しなければと思い、きっぱりとそう言うと、虫王子はまた目をまん丸にして、しばやく私をじっと見つめた。

だから、そんなに無駄にきれいな瞳で私を見つめるのはやめてください。

「あぁ。なるほど。了解です」

心得た、とばかりに虫王子は何度かうなづくと「そうですよね」と微笑む。

「わからなくもないですよ、その気持ち」

わかってもらえたらしい。

「恥ずかしいんですね」

わかってなかったらしい!

「俺は男だから、全然気にならないんですけど、コアオハナムグリさん、女の子ですもんね。虫が好きってあんまり知られたくないっていうか、あれですよね、そういう趣味とか秘密にしておきたいみたいな?」

趣味……。
この人、なにを言っているの?
誰か、通訳をお願いします。




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