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「俺、誰にも言いません」

虫王子はきらきらとした瞳を私に向けたまま、力強く宣言した。

「でも、これだけは言っておきたいんですけど、コアオハナムグリさん。虫が好きって恥ずかしいことでもなんでもないいですよ!」

「だから、私は」

「あぁ、いいですいいです。大丈夫です。わかってます。そういうことにしておきます」

違う違う。
どうしてこうなった?

「あのね……えっと君さ」

「あ、俺の名前ですか?」

「ちが」

「すみません。申し遅れました。俺、児島晴(こじまはる)です。農学部生命環境学部で昆虫生態学を学んでます。もうすぐ十九歳の一回生です」

虫王子は目をくりんと動かして「一番好きな昆虫は」と続けようとして言いよどんだ。

「一番を決めるのは難しいけど」

「あ、もういいです」

「いや、男らしくはっきり言います。かなりメジャーだけど、エサキモンツキノカメムシかな」

虫王子はなぜかすこし恥ずかしそうにそう言って、照れ笑いまで浮かべた。

「べたですよね、俺」

いや、全然べたじゃないし。
むしろ、初めて聞いた名前だし。
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