bug!
トノサマバッタ
素晴らしく晴れた次の日曜日。
私は袖がシフォンになっている水色のカットソーに袖を通して鏡の前に立った。
今日は、晴と公園に行く約束だ。
行き先は公園だし、スカートではダメだろうと思い、デニムに足を通す。
それでも、公園に出かけるにしては、精一杯女の子らしい格好なのではないかと思う。
これがデートというものなのかはよく分からなかったけれど、この日のためにこのカットソーを買ってしまったのだから、私の中ではデートなのだろうな、と認めざるを得ない。
晴にとってはそうじゃないんだろうと思うと悔しいのだけど。
「桜子さーん」
マンションのエントランスに下りると、晴はもう待っていて、私を見つけると嬉しそうにぶんぶんと手を大きく振った。
かわいい……。
母性本能をくすぐるとはこのことか。
ネイビーのティシャツにデニム、それに腰にシャツを巻いた晴は、今日も大きなリュックサックを背負っていた。
「楽しみですねぇ」
河川敷きに向かって歩きながら、晴は見るからにわくわくとしている。
「俺、タッパーもいっぱい持ってきましたよ」
「……タッパー?」
「はい! 虫入れるやつ」
タッパーに虫を入れる?
食料……?
まさか!
「見ますか?」
晴は歩きながら、リュックサックを前に回すと、中から百区円均一によく売っている食品用の小さなタッパーを取り出した。
半透明で、薄いピンクの蓋にはキリで開けたような小さな穴がいくつか開いている。
「これ、持ち運ぶ時に便利ですよ。おすすめです。ひとつ、あげます。ピンクがいいですか? 水色もありますよ? どっちがいいですか?」
いらない、と言えなかった。
本当は穴の開いたタッパーなんていうなんの役に立たないもの、いらないはずなのに。
それが、晴からのプレゼントだったから。
いらないと言えなくて。
「ありがと」
差し出されたピンクのタッパーを私は受け取った。
晴は嬉しそうに笑う。
私はそんな晴に気が付かないふりをして、前を見て歩く。
穴の開いたタッパー。
晴からもらった初めてのプレゼント。
私は袖がシフォンになっている水色のカットソーに袖を通して鏡の前に立った。
今日は、晴と公園に行く約束だ。
行き先は公園だし、スカートではダメだろうと思い、デニムに足を通す。
それでも、公園に出かけるにしては、精一杯女の子らしい格好なのではないかと思う。
これがデートというものなのかはよく分からなかったけれど、この日のためにこのカットソーを買ってしまったのだから、私の中ではデートなのだろうな、と認めざるを得ない。
晴にとってはそうじゃないんだろうと思うと悔しいのだけど。
「桜子さーん」
マンションのエントランスに下りると、晴はもう待っていて、私を見つけると嬉しそうにぶんぶんと手を大きく振った。
かわいい……。
母性本能をくすぐるとはこのことか。
ネイビーのティシャツにデニム、それに腰にシャツを巻いた晴は、今日も大きなリュックサックを背負っていた。
「楽しみですねぇ」
河川敷きに向かって歩きながら、晴は見るからにわくわくとしている。
「俺、タッパーもいっぱい持ってきましたよ」
「……タッパー?」
「はい! 虫入れるやつ」
タッパーに虫を入れる?
食料……?
まさか!
「見ますか?」
晴は歩きながら、リュックサックを前に回すと、中から百区円均一によく売っている食品用の小さなタッパーを取り出した。
半透明で、薄いピンクの蓋にはキリで開けたような小さな穴がいくつか開いている。
「これ、持ち運ぶ時に便利ですよ。おすすめです。ひとつ、あげます。ピンクがいいですか? 水色もありますよ? どっちがいいですか?」
いらない、と言えなかった。
本当は穴の開いたタッパーなんていうなんの役に立たないもの、いらないはずなのに。
それが、晴からのプレゼントだったから。
いらないと言えなくて。
「ありがと」
差し出されたピンクのタッパーを私は受け取った。
晴は嬉しそうに笑う。
私はそんな晴に気が付かないふりをして、前を見て歩く。
穴の開いたタッパー。
晴からもらった初めてのプレゼント。