bug!
ゴマダラカミキリ
五月に入って、日に日に初夏らしい暑さが続くようになっても、相変わらず晴の頭の中は虫でいっぱいらしい。
「五月といえば」
学食で白玉あんみつを食べている私の隣で、チキンカツ定食を食べながら、晴はさっきからずっと虫の話ばかりしている。
お昼過ぎの学食は昼時ほどではないにしろ、そこそこ込み合っていて、私と晴の座っている長いテーブル席も、ほとんどが学生で埋まっている。
もともと、私は同じ学部の女友だちと食後のデザートを食べていたのに、晴がいつものように「桜子さーん」と(尻尾を振って)来たものだから、みんな「晴くんによろしく」なんていいながら席を立ってしまったのだ。
「ゴマダラカミキリですよねぇ」
ですよぇ、と言われても。
普通は五月といえば、ゴールデンウィークとか鯉のぼりとかさ。
そういえば、ゴールデンウィークの五日間、晴は山で一人キャンプをしていたらしい。
もちろん、昆虫採集が目的の。
その話を、ゴールデンウィーク空けに三時間ほどぶっ通しで話続けたことから、相当楽しかったと推測される。
サクサクと衣のいい音を立てながら、それでもこの人らしいお行儀のよさで、晴はチキンカツをおいしそうに完食すると、ごちそうさまでした、と手を合わせた。
そんな子どもじみたしぐさがかわいくて、思わずじっと見ていると、顔を上げた晴と目があった。
「かわいいなぁ」
晴は私を見るとそんなことをどこかしみじみとした顔で言った。
「え!? か、かわいい?」
「なんか、その白玉がゴマダラカミキリの模様みたいでかわいいなぁって思ってたんですよ」
「……あ、そ」
一瞬、ドキッとした自分が腹立たしい。
「五月といえば」
学食で白玉あんみつを食べている私の隣で、チキンカツ定食を食べながら、晴はさっきからずっと虫の話ばかりしている。
お昼過ぎの学食は昼時ほどではないにしろ、そこそこ込み合っていて、私と晴の座っている長いテーブル席も、ほとんどが学生で埋まっている。
もともと、私は同じ学部の女友だちと食後のデザートを食べていたのに、晴がいつものように「桜子さーん」と(尻尾を振って)来たものだから、みんな「晴くんによろしく」なんていいながら席を立ってしまったのだ。
「ゴマダラカミキリですよねぇ」
ですよぇ、と言われても。
普通は五月といえば、ゴールデンウィークとか鯉のぼりとかさ。
そういえば、ゴールデンウィークの五日間、晴は山で一人キャンプをしていたらしい。
もちろん、昆虫採集が目的の。
その話を、ゴールデンウィーク空けに三時間ほどぶっ通しで話続けたことから、相当楽しかったと推測される。
サクサクと衣のいい音を立てながら、それでもこの人らしいお行儀のよさで、晴はチキンカツをおいしそうに完食すると、ごちそうさまでした、と手を合わせた。
そんな子どもじみたしぐさがかわいくて、思わずじっと見ていると、顔を上げた晴と目があった。
「かわいいなぁ」
晴は私を見るとそんなことをどこかしみじみとした顔で言った。
「え!? か、かわいい?」
「なんか、その白玉がゴマダラカミキリの模様みたいでかわいいなぁって思ってたんですよ」
「……あ、そ」
一瞬、ドキッとした自分が腹立たしい。