bug!
透明なガラス皿の中に浮かんだ白玉をスプーンでつつく。

『ゴマダラカミキリみたい』

そんなふうに言われてしまうと食欲が失せてしまったじゃないか。

ゴマダラカミキリ、がどういう虫なのかは、さっぱりわからないのだけど。

一瞬、晴に「どんな虫なの?」と聞こうとして、思いとどまった。
聞いてどうするんだ。

「食べないんですか? おなかいっぱい?」

晴は私の顔と白玉を交互に見ながらのんびりと聞く。

まぁね、と私が答えると、晴は「じゃあ食べて良いですか?」と白玉を指差した。

「いいけど、食べかけだよ」

晴は、やった、と嬉しそうに言うと、私の残した白玉をふたつともつるんと食べてしまった。

「わ、俺ここの白玉、初めて食べたけど、おいしいですね」

「うん」

「ところで桜子さん」

「ん?」

「今週の日曜日って暇ですか?」

「は?」

「桜子さんと行きたいところがあるんですが」

「……」

「あ、もう予定入っちゃってますか?」

「……いいけど」

やっぱりこれってデートですか?
今度こそ、これってデートですか?
< 29 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop