bug!
付き合う時に、カップルの数だけエピソードがあるように、別れる時にも人それぞれのエピソードがあって、それは他人に話して聞かせるようなものではないのだけど、私とケイタの場合は、これほどまでに下らないエピソードはないという理由で、人に話してもいいと思う。

付き合いはじめると、ケイタはよくうちに泊まりにくるようになった。
ふたりともひとり暮らしだったし、夜中までテレビを見てそのまま寝てしまったり、ケイタが帰るのをめんどくさがったり、時には単純に離れがくなったり、なんて甘い理由だったりもしたのだけど。

それとおなじだけ、私がケイタのうちに泊まりにいくことも多かった。

ケイタのうちのほうが、ほんの少しだけど、大学から近かったし、ケイタのアパートの一階には高齢のご夫婦がふたりで営んでいる中華料理屋さんは私のお気に入りだった。

付き合って一年ほど経った夏の終わり頃。
いつものように、ケイタの小さなシングルベッドで寝転んで雑誌を読んでいた私の斜め前に、あいつが出たのだ。

あいつがなにかというのはここでは伏せておこうと思う。
階下が中華料理屋さんというのと、夏の日というキーワードで想像していただければ、と思う。
< 33 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop