8歳上のパパ【長期更新停止中】
背中に、一志の視線を感じて、なんだか照れくさい。
そう言えば、付き合い始めた頃も、この感覚によくドキドキしてたっけ。
懐かしくなりながら、最後にもう一度振り返り、手を振った。
外の空気に触れて冷たくなったエントランスにそっと手を伸ばす。
その時……。
「――美未っ!!」
突然聞こえてきたその声に、あたしは驚いて再び振り返る。
その瞬間、フワリと感じる一志の温もり。
「体、冷えてる。
ちゃんと温めろよ」
時間にしたらほんの5秒ほど。
一志はそのままあたしに背を向けて足早に去っていった。
……入るまで見届けるとか、言ったくせに。
でも、そんなところがまた一志らしくて……あたしはフッと笑みをこぼす。
ドキドキと、切なさが混じり合う不思議な感覚。
きっとそれは、数日前この駐車場で感じた彼の温もりを体が覚えている証拠だろう。
でも……、
その記憶はもう、今の温もりに塗り替えてしまえばいい――。
一志の後姿が見えなくなると、あたしは大きく深呼吸をして、再びエントランスへと手を掛けた。