8歳上のパパ【長期更新停止中】



――どくん。

まさかこのタイミングで彼の口から昨日のことが出るとは思ってもなくて、体中に緊張が走る。


「き、昨日がどうかした?」

いったい何を言おうとしてるのだろう?
マグカップを握っていた手に汗がにじむ。


「あのさ……オレ昨日……」

――まさか……。

「飲みすぎちゃって……」

――まさかだよね?

「記憶……ないんだけど」

――キスのことなんて、覚えてるわけない。
  
  ――そんなワケ……ない――……。



「あのあと……」
「一志っ!!」


気がついた時には、あたしは思い切り立ち上がり、一志の名前を叫んでいた。


だって、この先のことを考えたら。
これから2週間も2人で暮らすことを考えたら……。

続きを聞くのが、怖かったから。


だから、ついバカなことを口走ってしまった。

ものすごい勢いで椅子を引いたあたしを見て、驚いた表情を浮かべている彼に。



「あ、えっと、一志のこと、どう思ったかなって……。

その…………

む、‘娘’の彼氏として――……」







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