8歳上のパパ【長期更新停止中】


――――…………


この時のあたしは、
ただ焦っていて。

目の前の彼の表情が曇ったことなんて、気付く余裕もなかった。



彼はあたしの言葉を聞くと、何も言わずにキュッと唇を左右に引いて、再び背を向け蛇口をひねる。

ジャー……
カチャカチャカチャ……

流れる水の音に混じって、食器がこすれ合う音が、虚しく響いていた。


また、
やってしまった。


そう思った時にはもう遅くて。
無言の背中が、あたしに拒否を訴える。



それから彼は、全くあたしを見ることなく言った。


「美未ちゃんはさ、好きなわけ?彼のこと」

「え……?」

「好きなんだろ?」

「っ……それはっ……!!」


‘好きじゃなきゃ、付き合わない’

そう言いたいのに、なぜか声にならなかった。

でも彼にとって、それは肯定と同じ。


「……それなら、いいじゃん。
オレには関係ない」


冷たく言うと、彼は一度も振り向くことなく、そのままリビングを出ていった。










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