8歳上のパパ【長期更新停止中】
知らぬ間に、お弁当が入ったバッグを強く握っていたのか、手に痕が付いていた。
営業部と書かれたスペースが近づくにつれて、緊張が高まっていく。
ドキンドキン……
ドキンドキン――……
「――……ぶっ!!」
突然、鼻に感じた痛み。
「……ったー、ちょっとママ、急に止まらな……
え……?」
すぐさま文句を言おうとしたあたしの瞳は、ある一点で釘付けになった。
立ち止まったママの背中越しに見えたガラス張りの部屋。
――バンッ!!
「澤木っ!オマエやる気あんのかっ?!」
――中から聞こえてくるガラスを震わすほどの怒鳴り声に、思わず肩がびくっと震えた。
「……すいません」
大声を出す上司らしき人物とは対照的に、か細い声が微かに届く。
「ママ、あれって……」
背を向けているから、顔は見えないけど。
見間違う訳がない。
怒鳴られていたのは、間違いなく<彼>だった。