8歳上のパパ【長期更新停止中】


知らぬ間に、お弁当が入ったバッグを強く握っていたのか、手に痕が付いていた。


営業部と書かれたスペースが近づくにつれて、緊張が高まっていく。


ドキンドキン……
ドキンドキン――……




「――……ぶっ!!」


突然、鼻に感じた痛み。


「……ったー、ちょっとママ、急に止まらな……


え……?」


すぐさま文句を言おうとしたあたしの瞳は、ある一点で釘付けになった。


立ち止まったママの背中越しに見えたガラス張りの部屋。



――バンッ!!

「澤木っ!オマエやる気あんのかっ?!」


――中から聞こえてくるガラスを震わすほどの怒鳴り声に、思わず肩がびくっと震えた。


「……すいません」

大声を出す上司らしき人物とは対照的に、か細い声が微かに届く。



「ママ、あれって……」


背を向けているから、顔は見えないけど。


見間違う訳がない。


怒鳴られていたのは、間違いなく<彼>だった。




















< 304 / 314 >

この作品をシェア

pagetop