8歳上のパパ【長期更新停止中】
「思い出した?」
あたしの表情が変わったことに気付いたママが、視線をこっちに向ける。
「……まさか……」
そう呟きながら、あたしは1年前ここに来た時のことを思い出していた。
――――…………
――……
――1年前の、あの日。
「まったく、ママめ」
ママの命令でお弁当を作ってきたのに、結局ママには会えなくて。
あたしは不満気にロビーを歩いていた。
急な出張だから仕方ないのは分かってるけど、せっかく、という気持ちもあって。
ふと時計を見ると、ちょうど12時を回った頃。
財布を持って食事に出かける社員たち。
……なんかお腹空いてきたかも。
そう思ったあたしの目に入ったのは、自分が持っていたお弁当。
持って帰って一人で食べるのも寂しい。
ママ命令で仕方なくとは言え、せっかく久しぶりに外出したんだし。
それに、失恋ごときでいつまでも落ち込んでいる訳にはいかないのも分かっていた。
ここなら、気が紛れるかも。
「……食べてくか」
出口に向かっていた足を止め、近くにあったソファーに腰を下ろす。
そして、持っていたお弁当を広げようとした、その時だった。