8歳上のパパ【長期更新停止中】



「あの……」


気が付いたら、あたしの足は彼の方に向かっていた。


「これ、良かったら食べてください」


「え……?」

急にお弁当を差し出された彼は、驚いたようにあたしを見る。


「あ、別に毒とか入ってませんから!
ただ……その、元気出して欲しいなって。

そのお弁当、うちの母親に頼まれて作って来たんですけど、なんか急な出張でいなくて。
捨てるのももったいないし」


確か、そんなようなことを早口で言った気がする。


「母親……?」

「あー……一応ここの社長です。岡崎奈々子」


「そうですか、社長の……。
なんか恥ずかしいところ見られちゃったな」

苦笑いを浮かべる彼に、どう反応すれば良いのか分からなくて。


「とにかく、それ食べて下さい!味は保証できないけど、食べないとパワーでませんよ!
お弁当箱はうちの母親に返しておいてもらえればいいので」


そう言って帰ろうとするあたしに、彼は穏やかな笑みを向けた。



「ありがとう……元気出たよ――」



――――…………
――……



















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