8歳上のパパ【長期更新停止中】



それからあたしも立ち直って、そんな出来事すっかり忘れていたけど。


「まさか……あの時の……?」

「……思い出したみたいね」


戸惑うあたしに、ママはゆっくりと可笑しそうに、その後のことを話し出した。


「翌日だったかな。空っぽのお弁当箱持って、純一くんが社長室に来たの。
“娘さんのおかげで元気出ました。頑張るのでクビにしないでください”って。
必死で頭下げるから、何があったのかと思ったわよ」

「……はは」


大胆な自分の行動がちょっと恥ずかしくなって、今度はあたしが苦笑いを浮かべる。


「でもね、それだけじゃなかったの」

「え?」

「彼、なんて言ったと思う?
娘さん、彼氏いるんですか?って。もうびっくりしちゃった」

「……」

「それまでの彼って、営業のくせにイマイチ積極性に欠けるといか……。
だから、その言葉を聞いて、チャンスだと思った。彼を伸ばすための。

あたし言ったわ。美未はアンタみたいな弱弱しい男は好きじゃないって。
美未のことが気になるなら、営業成績がトップになるくらいのことしてみなさいって」


そう言うママの目は、完全に社長の目だった。











< 310 / 314 >

この作品をシェア

pagetop