8歳上のパパ【長期更新停止中】
5.優しくしないで
それから10日後。
立春も迫る2月、あたしは今日もワゴン車の中で作り笑顔を振り撒いている。
今日の売り子はあたしと篠原さん。
忙しい時間帯を切り抜けた13時過ぎ、いつものようにお喋りをしていると、篠原さんが肘であたしをつついてくる。
「ちょっと美未ちゃん!
ほら見て!来たわよ彼」
――視線の先にいたのは、もちろん彼だ。
特に約束した訳ではないけど、お弁当を作ると宣言したあの日以来、あたしがバイトの日には、今ぐらいの時間に、お弁当を持って会いに来るようになっていた。
そして、いつもの青いベンチでそれを食べていく。
店長は売り上げが1つ減った!なんて、ふざけて言っていたけれど。
あたしはその時間だけは、彼を独占できるみたいで嬉しかった。