ブラッディーマリーと最弱男

「何を…やっとここまで辿り着いたのに諦めろと!?」

オーギュストは目の前のヴァンパイアの少女に激しく激昂した。
人間が触れていいものではない?
だから何だというのか、だとしても、納得出来る筈も無いのだからーー

「……ラズ、こちらに」

彼女が透き通るかの様な声でラズと呼ぶと、薄紫色の髪と目を持つ少女がどこからとも無く姿を現した。

恭しく主である彼女の右手を手に取り、陶器で作られたかの様な長く、白い手に口づけを交すーー
これが彼女達のマナーでもあり、彼女達の忠誠を表しているのだ。

「お呼びですか、主様」

ラズは彼女の顔を見てはいないようだ。
何か理由があるのだろうか?



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