ブラッディーマリーと最弱男
マリアンヌはゆっくりとラズに近づき、銀色の絹糸の様な髪を撫でた。
「いいわ、ラズがいなければ困るものね?」
妖しくも美しい彼女達に目が離せなくなっていたーー
ヴァンパイアという人間とは違う能力、知性や富を持つヴァンパイアも居るのだという話を聞いたことがあるのをオーギュストは思い出す。
「貴方、名前は?」
こちらに向きなおり、コツコツとヒールの音を響かせてオーギュストの顎に手を当てたーー
「名乗るとでも?」
「ふふっ、いいわ貴方が言わないのならば…」
マリアンヌは赤い唇から犬歯を覗かせ、自らの白い指を噛み、ポタリと流れた血をオーギュストの心臓に塗り付けるーー