春に咲く柚
ペンを取られる時にちょっとだけ触れる手とか、


一緒に教科書を覗き込んだ時に接近する顔とか、


ほんの些細な仕草でさえ、反応してしまう。


余裕たっぷりな柚先輩に対して、私は終始慌てっぱなしだ。


「ほら、そこ。それはその公式じゃなくてこっち。綺咲の癖だよ。テストでは気を付けてね」


「は、はいっ。気を付けます」
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