春に咲く柚
「綺咲は今日も図書館?」


帰り支度をする私の傍ら、隣の席に腰を下ろして声を掛けてきた涼香ちゃん。


その左手の薬指には、シンプルなシルバーリングが光っている。


何でも、今月の記念日に尚先輩に貰ったペアリングらしい。


以来肌身離さず持ち歩いているのだ。


「うん。先輩が勉強見てくれるって」


涼香ちゃんにそう言うと、私は教科書を入れ終えた鞄を肩に掛けた。
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