春に咲く柚
「ちょっと、涼香と喧嘩中でさ。いや、俺が悪いんだけど……」


頬をかきながら苦笑する尚人。


それに俺と恋は顔を見合わせた。


視線を尚人に戻すと、無言で続きを促す。


「あー……。なくしちゃったんだ、指輪」


ポロッ、とそう言った尚人。


恋は何のことか分からない、という表情で首を傾げたが、俺は「ああ」と頷いた。


尚人が涼香ちゃんにあげた、ペアリングのことだと分かったから。
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