春に咲く柚
俺は薄く微笑んで一つ息を吐くと、綺咲の頭に手を乗せた。


綺咲の柔らかな髪を撫でながら、出来るだけ優しい声で、言う。


「大丈夫。すぐに仲直りするよ。だって喧嘩って、互いが想い合っているからするものでしょ? だから、大丈夫だよ」


綺咲は目尻の涙を拭いながらコクン、と小さく頷き、顔を上げて、笑った。


「はい」


綺咲が笑うと、俺も自然と笑みが零れる。


そのまま俺達は家路に着いた。
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