春に咲く柚
涼香ちゃんの表情は遠くてよく見えなかったが、尚人の真剣な声音は絶えず耳に届いてきた。


『この間は本当に悪かったと思ってる。もう二度となくしたりしないから……。もう一度だけ、やり直すチャンスをくれないかな……?』


校庭内が静まり返っていた。


事情も知らない筈の二人の会話に、ただ耳を傾けている。


そして、


『……分かった』


という涼香ちゃんの一言に、会場中が沸いた。
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