春に咲く柚
「な、何? どうかしたの?」


ひきつった声でそう尋ねると、一人の女子が気まずそうに視線を泳がせた。


「あ、ううん……」


”何でもない”


そう言われても、全然”何でもない”という顔はしていない。


その女子生徒が黙ってしまうと、また別の女子生徒が前に出てきた。


「ねぇ。春宮さんの彼氏って、男子高二年の音羽柚季先輩でしょ?」
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